破綻するブラック企業の楽しみ方(4)

実働時間が大きく減少で士気下がる

 この日に朝礼が終わるのは、おおむね11時30分。社員が席に戻り、メールの処理などをすませると昼食の時間になっていた。ある中堅社員は笑い飛ばす。

 「朝礼疲れで午後からは仕事に身が入らなかった。私は営業職だったので、すぐに外出して映画を見たり、パチンコで過ごしたりしていました。月曜日の午後はオフタイムと割り切って、目標達成そっちのけで遊んでいた人が結構いました」。

 朝礼の呪縛は月曜日だけではなかった。火曜日以降は、各部で午前9時の朝礼で課ごとに当日の予定と目標を発表し、午後5時には夕礼が開かれ、やはり課ごとに1日の振り返りと翌日の予定を発表した。それにしても、なぜ会議を重ねに重ねた上で、こんなにも集わせるのだろうか。

 その趣旨はPDCAをデイリーで高速回転させることだったが、「朝礼と夕礼と会議の合間を縫って仕事をせざるをえなかった」(元幹部社員)という倒錯した現象を常態化させたのだ。

 実労時間が削減され、無用な疲労を招くうちに、社員の士気は目に見えて落ちていった。もはやPDCAで業績を回復させるどころではない。業績は3期連続赤字という危険水域に近づいていった。この会社では、PDCAが“疲労増殖のツール”として機能したのである。◆バックナンバー(1)(2)(3)

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