経費削減で下がりまくった士気
水戸や宇都宮など都心から100キロ圏内の出張では、往路は特急電車の利用を認めるが、復路は普通電車を利用すること。例に挙げられた水戸と宇都宮ではクライアント獲得に向けたセミナーを集中的に開いていたが、一部の社員が「事実上の出張禁止命令だ」と騒ぎたて、これが社内の世論に拡大し、営業担当社員は近郊にしか訪問しなくなった。
上司も会社が普通電車の利用を命じた手前、何も言えず、クライアント獲得数は激減していく。
承認を得ない電車移動には経費が支払われない。それならば、机にへばりついて過ごそうか。20人の部員の大半が外出を控え、ネットでの情報収集に終始しはじめたが、社内に引きこもっているうちに、やがて仕事を後回しにするようになった。
「PCで映画を見たり、音楽を聴いたり。1日中アルバイト原稿を書いているメンバーは『外出がなくなって稼げるようになった』と話していました」(元調査企画部メンバー)。
公平性、透明性、妥当性――ごく当たり前のルールから逸脱した経費削減措置は、不信感と機能停止を招き、見る見る士気を低下させていったのだった。
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