破綻するブラック企業の楽しみ方(8)

「俺、会社やめる」に泣く女房

 「このさい辞めてもいいんじゃねえの~。退職金が出るうちに辞めといたほうがいいかもよ」「そうだよな。ここで粘ってもさあ、会社といっしょに沈んでくだけだしな・・・」。次の仕事のあてはなくても、会社に見切りをつけていた社員は、これ幸いに退職を即決した。

 しかし決断に苦しむ社員もいた。ある中堅社員は退職を決意したものの、妻への説得が難儀だったと同僚にこぼした。「女房に相談したら、泣かれちゃってさあ。毎日遅くまで一生懸命働いてきたのに、辞めることになるなんて悔しいねって・・・」。

 この社員は自問した。バッサ、バッサと社員を平気で切り捨てる。それが、この会社の本質だと糾弾したところでまったく意味がない。

 上司とソリが合わないとか、長時間労働に耐えられない社員は次々と追い詰められ、切られてきたではないか。そんな会社に在籍しつづけた自分が呑気だったのだ。ここは労働基準監督署にマークされつづけている札付きのブラック企業なのだ。

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