破綻するブラック企業の楽しみ方(8)

ブラック企業に就職したのは自分の責任

 もっと人生設計をまっとうに考えていれば、他の会社に就職して、こんな思いをしなくてもすんだだろうに。ブラック企業に就職したのは、自分がくだした選択にほかならない。そして、突然の退職を決断せざるをえなかったのは、人生設計を軽んじてきたことへのツケなのだ。すべて自分に帰する問題だ。この中堅社員はそう総括したのだった。

 社員の決断に意外性はなく、予定調和の結果になった。会社にしがみつかなくても食べていける社員、住宅ローンを背負っていない社員、部署が閉鎖されて意に沿わない異動を強いられる社員。こうした社員が手を上げたのである。3度に分けて開かれた退職説明会では、やっぱりお前も辞めるのかと互いにニヤリとする場面が交錯し、サバサバとした空気が漂っていた。

 説明会を経たのち次々と退職を申し込みが集まり、締切日には100人が揃った。その2週間後の7月末日が最終出社日で、それまでの間、日中は引き継ぎ、夜は送別会がつづく。 

 どの部署でも引継ぎは世間話をしながら和やかに進められたが、廃止される部門以外では、残る社員の負荷がいっきに増え、担当の決定が容易に進まなかった。緊急性が弱く担当の決まらない業務は、すべて部長預かりとなって、事実上の休止となった。しかも引継ぎとはいっても、決して単純ではない。業務によっては、起承転結の機微や状況に応じた優先順位の変更など属人な要素が多く含まれ、手順書をもとに説明しただけでは後任者は呑みこめなかった。

 この間、取引先に退職の挨拶に訪れると、相手の関心は、ほとんどが今後の身の振り方に集中した。

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