7億円の移動用ヘリを買った新人弁護士「闇の番人」田中森一(3)

10億円で買った土地がすぐに15億円に

 地上げやビル建設を生業にする不動産デベロッパーは、地場のヤクザや権利をたてに無理難題を言い立てる住民との交渉を、えげつない手段を使ってでも、いかに早くうまくこなすかが成功のカギを握る。汚れ役を引き受ける成り上がり不動産業者への融資は、大手銀行に代わって、大手商社やのちに問題となる住専(住宅金融専門会社)が引き受けた。

 朝日住建は伊藤忠商事をバックにつけて、飛ぶ鳥を落とす勢いだった。80年代末、キタ新地の高級バーで松本と飲んでいると、30分ほど中座する。戻ってきた松本は「30億で地上げの話がつきました。先生、5000万で契約書をお願いできますか」

 10億円で買った土地がすぐに15~20億円になる時代だ。

 「そんな無茶な報酬は受け取れんよ」

 「ほなら、契約の立ち合いということで」と、田中は数百万円のカネを得る。こんなことは日常茶飯事で、クラブの帰りに御車代として1000万円受け取ったことも数回ある。

 「領収書のない裏金を蓄財して、脱税なんてことになったらかなわんから、飲み屋でパッと使う。アベノミクスといっても、今は接待交際費の用途も、税金でがんじがらめだから飲み屋は潤わない。バブル時代は税務署もうるさくなかったからみんなにカネが回った」

 しかし、中には筋金入りのドケチもいた。

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