一周遅れの将棋人生も、今が最高の人生
「羽生(善治)さん、渡辺(明)さんのように中学生でプロになって、18歳で先生と呼ばれるような棋士たちとは違います。技術的には勝てません。わたしは一周遅れの棋士人生でしたから」
桐谷さんは、高校を卒業して18歳6カ月で奨励会に入門。21歳の誕生日の前日までに初段にならなければならなかった。奇跡の連勝が始まり、初段に昇格し、その後の頑張りもあり、プロ棋士になる夢は叶ったものの、現役時代はタイトルとは無縁だった。2007年に引退したが、確たる実績のない桐谷さんにはおいしい仕事は回ってこなかった。
だが、棋士時代の株の経験は無駄にはならず、投資の神は見捨てなかった。投資家仲間からテレビ出演の誘いがあり、そこからテレビ出演のオファーは頻繁に来るようになり現在に至っている。
「うれしいです。オファーがひっきりなしに来て、今となっては本当にありがたいことです」と喜ぶ。
この取材中も、同じマンションの住民がシチューを持ってきてくれたり、昔のファンだったという人から電話がかかってきたりしたほどだ。64歳になっても、脚光を浴び多くの人に囲まれる人生を送っている。
桐谷さんはかつて、株で数十億円を稼ごうと考えていたこともあったという。信用取引はその手段の一つでもあるのだが「若い人で野心があるなら、目指してもいいでしょうけど。今は生活に困ることはないので、お金を増やしてもどうにもならないですしね」と語る。
アップダウンはあったにせよ、最終的に、現在でも1億円以上の株式を保有しているからこそ出る言葉に違いない。