六本木ヒルズもダメ? 「タワーマンション節税」の罠

六本木ヒルズ? 3億円を5000万円で評価

 タワーマンションを使った節税については、ゆかしメディアでも過去に掲載している。それは、特にブランド立地のタワーは価格が過熱傾向にあり、相続税対策のためだけに盲目的に購入すると、トータルで損失が出る可能性が高くなる、という点に触れた。ここでは肝心の節税対策としての有効性について、もう少し見てみることにする。


写真はイメージ
 ここに一件の裁決事例がある。平成23年7月1日に国税不服審判所が出したもので、タワーマンション節税への課税に対する処分で、相続人が不服を申し立てたが、節税は認められなかった。ただし、上乗せされた重加算税が部分的に取り消されている。

 対象となった物件は、裁決書などのデータから六本木ヒルズ(東京・港区)のレジデンスと一致しているため、その可能性が高い。30階の約100平方メートルの部屋を約3億円で購入し、ほぼ同額で売却。しかし、相続評価を約5800万円として申告した。経過は次のとおり。

平成19年7月 被相続人(父)入院
    8月 タワーマンションを2億9300万円で購入
    9月 被相続人(父)死亡
    11月 所有権移転登録をはじめ相続手続きを完了
  20年2月 相続人(息子)がマンション売却を業者に依頼
    7月 タワーマンションを2億8500万円で売却
  22年4月 更正処分を不服として異議申し立てを行う
    6月 申し立てを棄却
    7月 国税不服審判所に審査請求

 このタワーマンションだが、相続税法22条(評価の原則)のとおり、特別に定める場合をのぞいて、取得時の時価によるものだが、その評価は次のようになる。

土地:4118万1124円
建物:1683万7100円

 これで合わせて約5800万円で、実勢取引額の約5分の1という評価になり、かなりの資産圧縮に成功したことになる。

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