六本木ヒルズもダメ? 「タワーマンション節税」の罠

私立医大理事長の場合

 ここで紹介するケースは、総資産が10億円以上を保有する私立医大の理事長で、新築マンションの区分11戸を、約8億円の借入ローンで一気に購入したというものだ。相続人による申告額は評価基本通達どおりの1億3170万円だが、一方で税務署は購入価格の7億5850万円との評価を行った。

 基本は前出の六本木ヒルズの例ように、財産基本評価通達どおりの評価を行ったものの、税務署から特例が持ち出された格好だ。国税不服審判所の裁決を経て、最高裁まで争い、「『特別な事情』は、いかなる場合にその評価が行われるのか全く不明確で、恣意的な課税を許すことになる」などと主張したが、いっさい認められなかった。主な経過は次のとおり。

昭和62年10月 約8億円を借り入れ、マンション約8億円分を購入
    12月 被相続人(父親)が死亡し、相続人が相続
 同63年2月~  マンションの売却を契約し順次手続き
     6月  相続税申告

 当時は不動産市況も良く、キャピタルゲイン狙いの転売を目的とした富裕層も多かったことは確かだ。昭和63年10月に行われた衆院「税制問題等に関する調査特別委員会」では、水野勝政府委員から「相続税の税額が9割くらい違うというケースがかなり見られた」との発言もあり、その時代の背景を表している。

 そうした背景から、租税特別措置法が63年12月に改正され、相続開始前3年以内に取得した不動産は取得価額によって評価するという特例が新設された。だが、その後にバブルが崩壊し、担税力を上回るケースも出てきたために、廃止されている。

 タワーマンションは古くて新しい相続税対策、万全であるとは考えないことだ。

1 2 3 4 5
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる