大塚家具父娘対立は相続のこじれ? 株券15億円は養育費か譲渡か

少人数私募債

 久美子氏が2009年に社長就任に際して、勝久氏には次のような4つの条件を出したのだという。
1勝久氏は経営から退く、いざとなれば援助を
2社外取締役を入れる
3大塚家具から人事・総務の2人のプロパー幹部を取締役に入れる
4相続・安定株主対策を行うこと

 1~4まで全項目とも創業者勝久氏の力を削ぐ方策だと解釈できる。結局、すべてが実行されたのだが、最後の4については経営方針でこじれてしまったために、譲渡した株式を返せと主張し、現在は勝久氏が2件の訴訟を提起して係争中となっている。これは、会長が保有する株式が相続時に売却を迫られたりしてバラバラになることなく、資産管理会社で保有して一元的に管理しようという目的があった。スキームの概要は次のとおりとなる。

大塚家具(勝久氏)⇒  ききょう企画 (大塚家具株130万株)
ききょう企画 ⇒ 大塚家具(勝久氏) (社債15億円分、年利1.5%、元金償還)

 これは「少人数私募債」と呼ばれるもの。50人未満の投資家に対して社債を引き受けてもらうが、投資家は源泉分離課税(2016年発行分からは総合課税に移行)となることで節税対策にもなり、発行する側の法人は取締役会の決議のみで条件を決めることができ、手続き面でも実行が容易であることから、発行側と投資家側と双方にとってメリットは大きかった。

 また、株式は購入時の時価評価されるため、1株=1200程度の安い時期の相続対策は絶好期でもあったと言っても良いだろう。

 これで勝久会長の5人の子供たちにとっても将来の相続の不安も解決したはずと思われたのだが、実際には、相続対策の始まりが争族の始まりになってしまった。

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