会社とは売るものなのか?
大根田勝美氏
1982年、大根田勝美さんの相棒ペル氏が、そう話を持ちかけてきたのだった。面白い器械とは、ブックバインダー氏という医師が作った動脈硬化の斬新な治療機器を指す。ここにビジネスチャンスを見つけた格好だが、経営に参画するというものではなく、資金、人材などで起業サポート。その報酬として株式を受け取るというものだった。
「なんでせっかく作った会社を売るんだ? 人からはよく、そう言われました。みんな自分の子供に継がせたりする人も多いのですが、わたしもその時代に日本にいたら、ずっと経営して息子に継がせていたかもしれません。ペルと出会わなければ、そんなことは知らないままでいたでしょうね」
今では、日本でも若手経営者の間では、会社や事業売却は行われることもある。しかし、80年代初頭の日本ではそうした発想はまずなかっただろうし、金融の最先端ウォール街の第一線で働いてきたペル氏だからこそ出来た発想だと言えるだろう。
そうして、ブックバインダー医師を起業サポートした会社「バーサフレックス」は88年、大根田さんをはじめベンチャーキャピタル、個人投資家などの全株式は、合計1億ドルで売却できた。大根田さんはそのうち15万ドルを出資しており、約40倍にあたる600万ドルを得た。
だが、これで終わりではない。ペル氏はまた違う案件を次々と持ってきた。