「松濤」48億円の都知事公館はバブルなのか?

同じ渋谷区の高級マンションに負けた?

 「531万円」。

 これは今年、奇しくも松濤一丁目と同じく渋谷区にある高級住宅街・代官山にできた高級賃貸マンション「ラ・トゥール代官山」の最も賃料が高いプランだ。こちらは大使館関係者にも人気があるという。同じ渋谷区だというのに…。

 前出の不動産営業マンも「あの立地ならば、ラ・トゥール代官山くらいの賃料は取れた可能性はあるでしょう」と話す。確かにそのくらいのものであれば、売却、もしくは賃貸マンションとして運用もできたかもしれない。ちなみに、以前イタリアの団体に貸していた当時は月額約300万円で貸していたこともある。

 この都知事公館は広さの割には会議室が多く、居住スペースは狭いとも言われる。ただ、当時の都知事も売るつもりで工事をしたわけではないので、今さら言ってもどうにもならない。

 石原知事は過去の定例記者会見で、記者に感想を問われて次のように答えている。

 「嫌だよ、あんなとこ。住めるとこじゃないもの、本当に。行ってごらんよ、あんなとこ。みっともないよ。あんなものを、だれがつくったか知らぬけどね、今の官邸と同じで、営繕部がつくるとあんなものしかつくれない。だから、官僚のセンスってあんなものだよ」

 ここが契約に至らない理由なのかもしれない。

 また、第一種低層住宅のため商業施設にもできず、公共財のために値下げもできず、出来ないづくしでピンチに陥る東京都。「申し込みには至っていませんが、これまで何件かお話はさせていただきました。現在も交渉はしております」と財務局は説明する。

 来年は都知事選挙を控える。そこで社会部記者からこんな皮肉の声も出る。

 「知事公館に住む人が新知事になれば、売らなくてよくなる」

 富裕層に人気がある高級住宅地・松濤一丁目で、知事公館の存在が昔のことのように忘れ去られようとしている。

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