大きなサプライズではない
トレード部門による不正取引は、数年に1度くらいの割合で必ずといっていいほど起きている。「それはサプライズでもなんでもないし、いくらチェックが厳しくなっても、専門化しすぎて担当者以外がわかりにくくなっている」と元UBS社員は話す。
アドボリ容疑者が担当していたのは「デルタ・ワン」と呼ばれるETFのトレードを主体とした部署。また、警察の調べに対して、手口については供述していないというが、ミドルオフィス出身者ということで、事務作業には詳しく何らかの隠ぺい方法を編み出していたのではないか、とも思われる。
「学卒でMBAの学位もなく、フロントに異動できたので、それを守りたいという気持ちはあったのでは」(業界関係者)という声もある。UBSに残るには、同僚よりもすぐれた数字を残すのは至上命題だ。
ETFでのさや取りで、20億ドルに上る損失額は、いずれにせよハイレバレッジでのトレードに失敗していたことが原因だと見られる。
アドボリ容疑者の年収は「2000万円程度ではないか」(同)と言われる。とても自身で弁済できる額ではなく、もはや、ミラクルが起きることに賭けるしかなかった。
また、近年のUBSも同時にトレード部門に、ある種のミラクルを期待する事情があった。