「日本にこんなワインがあったのか」~鳥居平物語(最終回)

(最終回)「各方面で絶賛される『鳥居平』」

経済ジャーナリスト 湯谷昇羊

「アビシウス」でシャトー勝沼130周年記念


今村英勇氏
 東京・日比谷、ペニンシュラ東京近くのビルの地下に隠れたるフレンチの名店「アピシウス」がある。私も、仲のいい経営者に連れられて何度か訪れたことがある日本を代表するフレンチだ。店内は重厚な雰囲気で落ち着きがあり、従業員の応対も洗練されている。壁にはさりげなくシャガールやユトリロの名画が掛かっている。料理もワインも絶品だが、値段の方も相当なものである。「自腹では、とても来店することはできないな」という印象だった。

 その「アピシウス」で今村英勇が「シャトー勝沼130周年記念 オールヴィンテージを飲む会」をやるという。2007年9月19日のことだ。私も「鳥居平2004年」を200本買ったことと、大手証券会社元副社長の縁で呼んでいただいた。

 帝国ホテルの田中健一郎総料理長など、各界を代表する約50人の出席者を前にした今村の挨拶の後、数十年も経ている年代物のワインの栓が、惜しげもなく次々と開けられた。

 時間の経過とともに会場は、グラスからほとばしるワインの芳醇な香りに満ちて、鼻腔にじんわりと染み込んでくる。赤ワインはシャンデリアの光で濃厚な赤に煌めき、白ワインは黄金色に輝く。至福の時となった。極楽浄土、エデンの園とはまさにこのようなことを言うのだろう。

 埃にまみれた一升瓶に入った100年もの白ワインもいただいた。驚くべきことにそのワインは透明感があり、生き生きとした“若さ”を感じた。不思議な体験だった。

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