105億円使い倒した御曹司の心の闇(2)

恵まれていた方だと思う

 「ギャンブルに勝手な期待値を描いてしまいました」。

 1866年にロシアの文豪ドストエフスキーが発表した異色の短編「賭博者」にも描かれているとおり。資産家の老婆、前途ある主人公の若者ともにルーレットで身を持ち崩してしまう。バクチとは本当にすべてを失ってしまう、古今東西で共通の麻薬なのだ。

 バクチとは胴元が有利なことは言うまでもなく、そこに過大な期待値を描いてしまった意高。スッテンテンになるまで遊び倒さなければ、懲りることはなかった。「遊ぶスリルがあったのと、大きく負けると深みにはまり、取り返しがつかなくなりました」と冷静に証言したが、すべてが後の祭だ。

 検察官から「苦労のない恵まれた人生だったのですか」とも聞かれた。少し戸惑ったように意高は「考え方にもよるとは思いますが、恵まれていた方だと思います」と証言した。

 富裕層に関する著書も多い作家の本田健氏は、過去のゆかしメディアの取材で、2代目、3代目が持つ特徴的な性質として「破滅願望というものがある」と語っていたことがある。

 明晰な頭脳と卓越した経営手腕を持ち、さらには井川家を背景にした富を誇った意高。これまですべてのものを握ってきたが、バクチだけは自分の思い通りになるものではなかった。10日判決が言い渡される。(敬称略)(終わり)

1 2 3 4
よかったらシェアしてね!
目次
閉じる