社長が社内放送で退社時間を知らせる
労組は長時間労働の是正と未払い分の超過勤務手当て支払いを要求項目に、本社前でビラをまいたうえで会社側と団体交渉を重ねたが、団交を担当した人事課長と法務課長は「夕方以降と休日は上司からの指導や勉強会に当てているので、我が社では労働時間ではありません。自分の成長のために研鑽を積む時間です」と主張して譲らなかった。
詭弁ではなく、そう思い込んでいたのだが、思い込みが激しく、何度話し合っても平行線のままだった。労組は、これ以上は時間の無駄と判断して、自治体の労働委員会へ提訴した。
委員会に出頭を命じられた総務担当役員と法務課長は、同じ主張を繰り返したが、委員は「それは御社の身勝手な理屈で、世間では労働時間と言うんですよ」と一蹴する。
そして、委員会の調停によって、会社は過去2年分の超過勤務手当てを全社員に支払った。同時に毎日午後7時30分になると、社長が社内放送で「あと30分で8時になるので退社の準備に入りましょう」と呼びかけ、長時間労働を是正する姿勢を示すようになった。
この会社が破綻にむかう過程で、取引先やメインバンク、専門誌などが着目していたのはビジネスモデルの欠陥だが、じつは内部崩壊がはじまっていたのである。内部崩壊こそ、破綻の最大の原因だった。◆バックナンバー(1)(2)