「詐欺事件はいつの時代でもある。手口はいろいろだが、本質は昔も今も変わりない」。田中森一は、まず大阪地検特捜部時代に窓口となった豊田商事事件を上げる。豊田商事事件は高齢者を中心に数万人が被害にあい、被害総額は2000億円近くと見積もられ、1985年には会長の永野一男がマスコミの前で惨殺された。この事件では告訴状が数多く届いたが、当初は詐欺としての立件を見送っていた。
「民事でやってください」が検察の本音
「“絶対儲かりますといわれて、信用してカネを出した”これが詐欺といえるのか」
田中森一氏
「豊田商事はおじいちゃん、おばあちゃんに手を広げた。こうなったら話は別だ」
判断能力が極端に衰えた年寄りが騙され、なけなしのカネを取られとこが相次いだら断固、詐欺事件として立件しなければならない。
「判断能力に欠ける社会的弱者は、幅広く救済しなければいかんのが、法律の立場だね」