M資金詐欺の黒幕は帝国ホテルに住んでいた「闇の番人」田中森一(6)

偽造通帳だった

 「通帳もこうしてあるし、うちの通帳に間違いないと行員は言っていますし…」。宅見組長は不可解な顔をする。田中は話を続けた。

 「ヤクザから1億円のカネを借りるといったら大変なことですよ。命がけだ。5、6千万の金利を飛ばしても解約をしてカネを作る。それがフツーの人間の考え方ですよ」

 天下の大親分の顔色が変わった。

 「ええっ!?この貯金通帳はウソですか」
 「大阪地検の特捜に持ち込んで、調べてもらいましょうか」
 「是非お願いします」

 案の定、貯金通帳は巧妙に偽造されたものと判明した。
 「あのヤロー、俺を騙しやがって!!」

 山口組の情報網を使い、60億円の定期預金通帳を持ち込んだ人物を探したが、杳として行方が知れない。完全に姿を消していた。山口組のナンバー2が、詐欺の被害を警察に告訴すれば面子は丸つぶれだ。告訴はできない、詐欺師はそこまで計算しての仕事だった。

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