破綻するブラック企業の楽しみ方(11)

最終出社日まで昼食にビールやワイン

 「ブラック企業のなかで心身ともにすり減っていたので、やさしい言葉をかけられるとホロリとこたえましたね。会社の苦境が知れわたっていたので、売り掛けのある先でも詰問されたというような話は聞きませんでした。もっとも、担当社員を攻めても何にもなりませんけどね」(元幹部社員)

 ところが、家族の反応はやや違った。いつ倒産しても不思議でないと何度も伝えていたが、やはりショックを受けた様子だったと、多くの社員が口にした。来月からの生計はどうなるのか。すぐに仕事が見つかるのか。家族の不安はほぼ共通していた。

 「もう倒産するような会社には二度と勤めたくないと思いたいところでしたが、今回の経験で、次の就職先では何が起きても構わないとフェイドアウトしたような心境にもなりました」(元中堅社員)

 最終出社日までは、淡々と業務の敗戦処理が進められた。もはや社員たちは吹っ切れ、昼食時にビールやワインを飲む社員が珍しくなくなった。さらに男女社員が二人で昼食に外出して午後3時を過ぎた頃に、互いに寄り添うように帰社する光景も、連日のように見られた。茨の道が控えていただけに、それぞれが束の間の享楽に浸ったのである。
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